Dr.ビリングハーストの生食セミナー・レポート
                          (2003.8.7)

 8月に行われた生食セミナーに参加してきました。沢山の愛犬家の方や犬の専門家の方、動物病院や動物関係にたずさわる方がいらしていたようです。
 事前にアンケートハガキで質問事項を取りまとめ、それに沿った内容で講義を進めてくださっているようです。質疑応答には1時間半とたっぷり時間を取ってくださり、参加者に配慮したとても良いセミナーでした。1回1回違った内容のセミナーになっているかもしれません。
 ご興味のある方はご参加してみるととても勉強になると思います。
 私にとっては、手作り食のレパートリーが広がったような気持ちです。
 では、生食について勉強してきたことを簡単にレポートさせていただきます。

Dr.ビリングハーストについて

 Dr.ビリングハーストは獣医師です。最初は農学部で産業動物に関わり、現在は開業医として患者である動物と接するうちに、犬や猫は食べ物が直接健康に関わってくることを意識し色々勉強をされ、あちこちで講義をなさっているそうです。

なぜ生食なのか?
 
 犬の先祖といわれている狼は何百年もの間、獲物(草食動物)などを倒してその全部を食べてきました。その食性は一夜にして変えることができないということです。
 動物をまるごと食べるというのは、肉、骨、内臓、内臓の内容物(草食動物が食べた植物の未消化のもの、バクテリアなどの微生物=乳製品にあたるようなもの)を摂取することです。
 今から約1万2千〜1万5千年前に人間と犬が出会い、農業を営むようになった人間のゴミをあさる様になったそうです。ゴミの中には、動物の骨、肉、内臓、沢山の植物性のゴミなどが含まれ、雑食性となり狼から犬へと変わっていったそうです。
 そういった食性をずっと続けてきた犬にとって、生で食べることは極めて自然なことだです。また、生の食品には多くの酵素、アミノ酸、必須脂肪酸が含まれいます。加熱することにより、こうした大事な栄養素の多くが失われてしまうそうです。
 長年の犬の進化の過程、食性を考えた上でも、消化、吸収、品質をそこなうことなく摂取できる生食が犬の健康にとって一番良いという考え方です。

ペットフードについて

 近代的なペットフードが活用されるようになったのは70〜80年余り。体内の生理学的要求をそんなに急に変えることは出来ないはずだそうです。

ペットフードは? 手作り生食は?
全ての成分が加熱されている。
(加熱された穀物など)
全てが生である。
(生の骨付き肉など)
加熱されたタンパク質。
消化しずらい。
高品質、消化しやすい。
必須アミノ酸のはいった良質なタンパク
熱によって栄養素が破壊されてしまう場合も。 良質な脂肪
でんぷんと糖質は多すぎると体に有害な場合も。 良質なたんぱく質、脂質。
生の野菜はなし。 生の野菜ペースト。

 獣医療と飼い主の意識の高まりでペットの寿命は急速に延びましたが、その代わり食べ物が老化に帰依するような変性疾患が増えているそうです。

 生き物にもともと備わっている細胞などの修復機能が不完全であると老化が進み、ダメージが蓄積されて病気が発生してしまうそうです。そのため正常な代謝を助ける抗酸化物質、ビタミンE,ビタミンCなどを食事にとりいれることが大切であり、ペットフードはそういった抗酸化物質が生食よりは低いのだそうです。

本来、犬が必要としない加熱した穀類が多く含まれる為の弊害

*高インシュリン、高血圧
*むくみ、水腫
*高コレステロール〜悪玉菌の増加、善玉菌の低下
*ガンの発生、老化の進行
*炎症、血小板が固まりやすくなる。
*肥満、糖尿病
*免疫系にダメージをうける。

生食について

★健康な生食の割合〜進化の過程で犬が食べてきたもの
 生の骨付き肉:60%
 野菜ペースト:20%
 内臓:10%
 その他:10%〜バクテリア、沢山のタンパク源、酵素、ビタミン、プロバイオティック、必須脂肪酸→自分の免疫系の強化となる。

<家庭での再現>

*獲物を全体で与える。〜一番いいのはコレ!
*個々の成分を別々に与える。〜骨付き肉、卵、果物、野菜を個別に与えるなど。
*全てを混ぜてパティ状にして与える。
*上の3つをコンビネーションで与える。

 犬の状態を見ながら、固定されないでいろんな方法で栄養を入れて与えていけばいいそうです。普通の商店に行って材料を買ってきて、それぞれの個体に合わせた食事を作ってあげればいいそうです。栄養が偏るからとドライフードをプラスする必要はなく、栄養バランスも毎食完璧ではなくても、ある程度の期間内で総合的にバランスがとれていれないいという考え方です。栄養学を学ばなくても安全な食事を与えることができるとのことです。

 先生の言うBARFとは、骨と生の食事の略語、生物学的に適切な食事という意味です。

生のパティの作り方

 完全にすりつぶした野菜ペースト、果物、生肉、骨を挽いたもの、オイル、ビタミン群、卵1,2個、内臓、昆布(ケルプ)などを入れる。レモンジュース、リンゴ酢、ヨーグルトを入れてもいい。それを1食分に混ぜあわせて固めたものを与える。残った分は冷凍してもいい。冷凍で栄養素が壊れることはない。ヨーグルトの生菌も大丈夫。

<ペットの健康に与える影響>

*寿命が長い。
*繁殖力がしっかりしたものになる。
*動物の活性化
*被毛が輝き、歯もきれいになる。
*精神状態が良くなる。
*遺伝疾患の発生を低下させる〜股関節形成不全、肘関節形成不全など
*内外寄生虫に耐性ができる。
*手術後傷口などの回復が早い。毒物などのショックにも強い。
*変性性の疾患を防げる。
*糖尿病、てんかんが少なく、回復にも役立つ。
*うっ血性心不全がでにくい。
*大腸炎、腎臓病などを予防
*ガンが少ない。
*添加物が入っていないので浄化作用がある。解毒の為に体調が悪くなる時期がある。
 これら全ては先生ご自身が患者さんと接してきて体験してきたことだそうです。病気に対しては、栄養学、病気、薬物の知識を持ち、処方食の成分を良く理解した上でなら生食に応用していくこともできるそうです。

各材料について

<生の骨付き肉>

*ミネラルが豊富
*リン、カルシウムのバランスがパーフェクト
*サプリメントの添加が必要ない。
*良質なタンパク
*全てのライフステージに合うパーフェクトな食べ物
*免疫機能の質を高める。
*軟骨は関節の健全化、抗癌作用がある。
*髄は不飽和脂肪酸が入っている〜必須脂肪酸、犬のエネルギーに大切で血液を作る。
*歯がきれいになる。〜口の中の細菌を正常に保ち、歯周病からくる肺炎、腎臓、ガン、子宮蓄膿症などの原因を防ぐ。
*精神的な満足感〜骨を食べるのは全身運動である。犬なら生後3週令、猫なら生後4週令から与えていい。体作りに役立ち、肘関節、股関節の疾患の予防となる。情緒面も安定し、免疫機能が向上する。
*すりつぶした骨でも同様の効果がある。〜卵殻パウダーでも可。
*生の小魚は内臓とともに与えると良い。生の骨付き肉に代用となる。寄生虫に注意し、バリエーションを考えて与えると良い。昆虫もそんなに悪くはない食材。
       
注意点

*骨はすい臓炎、肥満の犬には与え方に注意しなければならない。
*骨を守らないようにトレーニングが必要〜とりっこにならないために。
*加熱していない新鮮でできるだけ若い動物の骨が好ましい〜若い動物は体に毒素が蓄積されていない。
*高齢、若い犬、歯のない犬、骨を与えるのに適さない犬(塊を飲み込みそうなタイプ)は与え方に気をつける。〜すりつぶして骨粉にして与えるなど。

<緑の野菜ペースト>

*オメガ3、必須脂肪酸を含み、炎症を防ぎ繁殖力をつけ、疾患を予防する。
*ビタミンB12,チアミン、コリンは野菜にはあまり含まれていない。
*ビタミンC,A(カロチン)、E,Kは沢山含まれている。
*植物由来の科学物質の効果〜老化防止、体の変性の防止
*酵素、繊維質〜腎臓、肝臓に障害がある犬にとって大切である。
*野菜の効能〜肥満、すい臓、糖尿病疾患、皮膚疾患、腎臓、肝臓、ガンに効く。

注意点

*旬の野菜が良い。
*ねぎ類、生の豆はダメ。酵素を阻害する。〜豆腐、おからはOK。肝臓障害には動物性たんぱく質を控え、大豆などの植物性たんぱく質をとるといい。
*でんぷん質の多い野菜より葉野菜がよい。
*キャベツ類は全体の1/4以上は入れない。〜甲状腺機能を低下させる恐れがある為。
*野菜は外葉が一番いいが残留農薬が心配なのでよく洗うこと。
*穀類は与えすぎると良くないが、ごはんが好きな場合は全体の10〜25%までにとどめ、あとは野菜で補うと良い。

野菜の取り入れ方

*完全にすりつぶしてペースト状にすること。〜ジューサーなどで野菜の細胞壁をすりつぶす。犬はセルロースを消化できない。すりつぶされた細胞壁自体は繊維として役立つ。→草食動物の胃は自然のジューサーである。
*果物のジュースのしぼりかすもOK。

<内臓肉>

*レバー〜ビタミンA,D,たんぱく質、鉄分が多い。
*心臓〜カロリーが高い。
*腎臓〜レバーとほぼ同じ成分でやや低めの栄養素を含む。
*脳〜必須脂肪酸が豊富。鶏頭は素晴らしい健康食品。与えるときはくちばしを落としたほうが安全である。
*内臓肉はビタミンA,ビタミンB,ビタミンC,良質のタンパク、必須脂肪酸、酵素、自然の抗酸化物質、コレステロール、ミネラル、亜鉛、マグネシウム、セレニウム、鉄分、リンが豊富。リンが高くカルシウムは低め。

★注意点〜成長期、授乳中の過剰摂取は避ける。

<サプリメント・補助食品>

*卵、チーズ、オイル、海藻類(ミネラル)、プロバイオティクス(乳製品)、ビタミン類などのサプリメントなど

病気への応用について

*栄養学、病気、薬物の知識が必要。
*処方食についての知識が必要で理解した上で生食に応用する。
*自分が入手可能なサプリメントを知る。

 BARFの市販のマルチミックスパティは腎臓・肝臓の悪い犬に適しているそうです。また、尿石症の犬はマルチミックスパティに生肉をプラスするといいそうです。

関節炎への応用

*骨の量を控えてすりつぶす。
*カロリー、脂質を控える。
*でんぷん、糖質は最小限に抑える。
*野菜、果物ペーストを増やす。特に緑の野菜が良い。〜全体の50〜80%。糖質、でんぷん質の低いものが良い。果物より野菜を多くし、バリエーション豊かにする。
*疾患や各個体に合わせたサプリメントを入れたり、食事を作る。
*乳製品を控える。〜アレルギーがなければOK。糖質のないヨーグルトなどは適している。
*体重を減らす。
*加工、過熱したもの、穀類ベースのものを控える。
*動物性たんぱく質を控える。〜赤身の肉は炎症を悪化させる。白身の肉(全種の魚肉)、鶏肉、野生のウサギ、豚、カンガルーなどの若い動物の肉が良い。野生動物の肉はオメガ3が豊富。
*サメ軟骨、グルコサミン、コンドロイチン、緑イ貝などのサプリメントも良い。
*昆布を与えると良い。〜甲状腺機能を上げ、体重減に役立つ。
*肝油を少量与えるのも良い。〜オメガ3、ビタミンB,ビタミンAを含む。
*魚由来のオイルを入れると良いが過剰は避ける。
*麻の実油〜オメガ3が豊富で整腸作用がある。
*ビタミンE(抗酸化物質)、ビタミンCなどをとる。〜免疫系のUP、健全な胃を作る。
*ビタミンB群の摂取〜活性度を高める。

関節食のモデル〜それぞれ適した量を与える。(まとめて作った場合)

野菜・果物〜3.5キロ
手羽先、鶏肉、小魚、豚肉、ラム肉、大腿骨、軟骨など〜0.5キロ(全体の約15〜25%)
内臓、レバー、心臓、腎臓〜250グラム
プレーンヨーグルト〜250グラム
生卵(全卵)〜3個

猫の生食について

 犬とほとんど同じ作り方でいいが、生骨肉を全体の70〜75%、野菜ペーストの量をぐっと減らし、脂質を増やす。内臓肉を全体の15〜25%に増やすと良い。
 与えるときに人肌に温めると良い。市販のBARF DIETのパティは猫の腎疾患に適しており、ひき肉、小魚を加えると良い。

 セミナーレポートをHPに掲載するにあたっては、(有)ペットパティース・ジャパン様からご許可をいただけました。

参考リンク・ページ

PPJ Online BARF DIETのパティ、サプリメントなどを通販できます。Q&Aもあります。
BARFの考え方をとり入れた生食のレポートや体験談、ホリスティックケアについての情報が満載でとても勉強になります。
「フードの悩み」「ハンドメイドのススメ」のページで様々な情報やDr.ピトケアン氏のホリスティックハンドメイドの猫のレシピなどを紹介しています。
そしてココアの手作りごはん 手作り食の情報を収集しながら、これから我が家のごはんをどうしていこうかなというるんばのエッセイです。私個人の考えなのであんまり参考にならないと思いますが・・


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