股関節形成不全体験談〜バーニーズ・マウンテンドッグ・享年4歳♀・ノエル・るんば

  私とノエルの出会いは、ノエルが生後2ヶ月の時です。
  そのときの健康診断で、ノエルは股関節に異常がでるかもしれなく、クル病だと診断されました。決して健康とは言えない体でした。
  生後4ヶ月のときに、全てを責任持って迎えようと覚悟した私達家族の一員となります。その当時からノエルに現れていた症状を示してみます。

股関節形成不全とは(ミニ知識)
  
 股関節の寛骨臼と大腿骨頭のどちらかもしくは両方が、生まれつき発育不全または変形しているために緩く接続した状態となり、痛みを伴う後ろ足の跛行や腰のふらつきといった症状を起こす遺伝性の病気である。(寛骨臼をソケット、大腿骨頭を電球と考えるとわかりやすい。)
 関節の部分の骨が浅かったり、骨がゆがんでいる為に脱臼しやすい状態になっている。この状態で放っておくと関節炎による軽度から重度の痛みを生じ、最悪の場合は歩行困難となる。
 
外観から判断できる症状

1)犬座姿勢ができず、座るときにあぐらをかいたり、横座りしてしまう。

2)寝て起きたときに、立ち上がる動作がのろく、痛そうにしていることがある。
3)階段の昇り降りを嫌がり、痛そうにしていることがある。
4)ジャンプするのを嫌がる。また、高い台や車の荷台などに飛び乗ることができない。
5)歩くとき、後ろ足の歩幅がせまく、また踏み出しの前足がまっすぐにでないで円を描く。
6)後方から見たときに牛の尻のように、骨盤の部分が太く、大腿の部分の筋肉が細くなっている。
7)走りだす瞬間に、「うさぎ跳び」のような動作をする。
8)幅跳びやジャンプを嫌がる。

 上記の1)、2)、5)、6)、7)の5個は当てはまっていました。今思うとやっぱり悪かったのだな・・と再確認してしまいます。

 子犬のノエルは、自分の体が生まれつき悪い事を知りません。元気一杯にはしゃいでいました。当時、私もあまり重要視していなかったように思います。普通に生活していました。犬同士でじゃれて遊んだり、走ったり、転げたり、今思うと体に悪い事も随分チャコと2頭でしてましたね・・・(^^;)
 生後7ヶ月のとき、両肘に水がたまってしまうというハイグローマという病気になってしまい、約2ヶ月の闘病生活がはじまりました。
 詳細は別ページに書いてあります。
 ハイグローマが落ち着いた頃、通っていたしつけ教室で合同のしつけ教室で訓練士の先生から、「この犬は絶対に無理させないように。この子ならちゃんと分かるから。」と言われました。
 当時はチョークを使うちょっときびしめのしつけ方を習ってしまった私でした・・・しつけ方はノエルに全く向きませんでしたが、先生の犬を見る目は確かだったと感じています。
 それから、ノエルの腰を考えできるだけ激しい運動は避けるように気をつけました。
 
 生後1歳を迎えようとしていた冬に、ノエルに異変が起きました。
 急に長い距離を歩けなくなってしまったのです。最初はいつも通りお散歩に行けるのに、100メートルくらいしたら、前足がかっくんとはずれるようになってしまい、歩けなくなってしまいます。だんだん50メートル・・・と歩ける距離も狭まってしまいました。慌てた私は動物病院をはしごしてみてもらいましたが、痛みを感じている様子もなく、どこも異常なしとの診断でした。でも、ノエルは長くは歩けない。
 股関節が寒さで何らかの症状を起こし、他の前足などの関節に負担をかけているのではないか?というのが先生方の恐らくの診断でした。
 家族を説得して夜間はチャコと共に玄関に布団を敷いてノエルを寝かし、できるだけ冷やさないように心がけました。
 (当時は室内に犬はご法度だった我が家。^^;)
 朝は、お湯であたためたタオルで腰、両足をマッサージしてから、近くの空き地のみ散歩しました。マッサージは欠かさず1日に2回はしました。幸いそれ以上の悪化はなく、季節の移り変わりと共にノエルは元通り歩けるようになりました。

 1歳を過ぎて、夏がくる頃にはノエルはすっかり元気になり、夏に家族と犬2匹で2泊3日の旅行にでかけたり、川で遊んだり楽しい日々を過ごしました。その年の9月に避妊手術も受けました。今思えば、このときに股関節のレントゲンを撮ってもらえばよかったと思います。
 この頃からボランティアで老人ホームのふれあい活動に一緒に行くようになりました。

 ノエルが2歳の頃、今の愛犬家のサークルの皆さんとお知り合いになり、テリー・ライアンさん方式の誘導法でほめてしつけるレッスンを受けます。この方法は犬を誉めて伸ばしてあげるのでとても優しく、ノエルにぴったりでした。この方法でチャコ、うめちゃん、ボランティアで預かった犬をしつけたことがあります。シニアに入っていたチャコもうめちゃんもちゃんと基本的なことができるようになりました。(でも私はまだまだだけど)
 
 しつけのレッスンのときに、先生がノエルの腰の状態、歩き方に心配があるので、レントゲンを撮るように薦められました。全身麻酔でレントゲンを撮っていただき、初めてノエルがかなり重度の股関節形成不全だと知りました。両方の寛骨臼、大腿骨頭ともに平らで浅く、変形しており、これでよく歩いているな・・という状態。特に左足の方が悪かったように思います。事態を深刻に思った先生から、運動と生活においての制限を注意されました。

1)激しい運動、走ったり、飛び跳ねたりさせない。
2)車、階段など段差のある所では、必ず介助する。
3)今の体重よりダイエットして、これからは食事制限をする。
4)4本の足の爪に減り具合をチェックする。減りが早い足は引きずっているから注意が必要。(これは老犬にも言えるので参考にしてください。)
 
 ノエルにとって一番辛かったのは、食事制限でした。何しろものすごい食いしん坊でしたから。当時32キロだった体重を30キロくらいに落とすために(バーニーズにしてはとても小柄でした。)ヒルズの療法食のR/Dというダイエット食をはじめました。そうすると、かなり急激に体重が減ってしまい、逆に筋肉の減少が心配となりました。
 R/Dをやめ、普通のライトなどのフードに変えました。それでもノエルはいつもはらぺこ。このときは、手作り食のおからや野菜スープをフードにかけるなどしてなるべくお腹が満足するように心がけていました。
 体重は大体30キロをキープしていたように思います。
 
 ノエルが2歳の秋に日本獣医畜産大学で行われた股関節のセミナーに行きました。
 この先、悪化を心配して模索していた私にとって、かなり励みとなりました。実際に人工関節置換手術を行った飼い主さんの体験談やワンちゃんも来ていて知り合いになれました。
 実際の手術風景を写真のスライドで見ることができました。
 高度な技術と完全に滅菌された手術室と器具、よりすぐりの先生とスタッフの皆さんが全神経を集中して手術に挑む姿でした。
 ちょっとした細菌感染も命とりとなる手術。
 術後も安静にして1,2ヶ月かかり、入院の日々。一時も気が抜けない感じでした。入院中にお見舞いにくる飼い主さん、日に日に良くなる犬の姿が印象的でした。
 犬の場合、全体重の80%が前足、20%が後ろ足が支えているそうです。もし、両方の足が悪い場合、片足のみでも人工関節置換することでかなりの改善がのぞまれるとのことでした。その中で、かなり多くの犬が数ヶ月後にもう片方を人工関節に置換しているのが印象的でした。
 どうしても悪い足に負担がいくのでしょうか?
 人工関節置換は、結構高齢の犬でもちゃんと手術できる事、手術すると犬のQOLが守られる事も知りました。
 費用はとても高く、新車が1台かえるくらい・・ですが、手術した飼い主さんは皆晴れやかで本当に良かったと語っていました。
 
 家に帰り、他の手術方法、犬への負担、経済的負担を検討して、主人とも相談してみました。
 ノエルが本当に痛がって歩けなくなったとき、方法をあることを知ったことはとても心の支えとなりました。最悪の場合、安楽死を考えなくてはならないこの病気の場合も救える道があること。
 その反面、経済的負担や何ヶ月もの入院における犬への負担。車椅子の資料も取り寄せて調べてみました。
 
 私達がだした結論は、ノエルが自分の足で歩けている限りは、それを応援しようというものでした。
 ノエルと一緒にあるける1日、1歩を全てを大切にしようと思いました。
 万が一、歩けなくなったらいろんな手術方法を検討したり、車椅子を考えたり、最善を尽くそうと言うものでした。歩けなくなっても力を合わせて頑張ろうと決意すると、今までの不安も勇気に変わりました。
 
 その後のレントゲンで、ノエルの脊椎が変形を起こし、ブリッジを形成していました。それは、ヘルニアを起こす可能性も示唆していました。将来的に股関節が先にダメになるか、脊椎の方が悪くなって歩けなくなるか・・という所でした。
 さすがに落ち込みました。
 でも、ノエルのへら〜とした笑顔が私を支えました。
 
 一時期、先生から薦められた痛み止めの薬を服用しました。
 ですが、現時点で痛みを伴っていないノエルに服用をし続けることに私は疑問を感じました。この先、多分もっと病気が進行したらずっと服用しなければならない、薬の長期的な副作用を考えて、私はやんわりと
服用をやめました。(ホントはいけないことかも!)
 その代わり、コンドロイチンやグルコサミン、緑イ貝といったサプリメントを調べたり、それが添加されたフードや実際にサプリメントも試しました。寒い日の温マッサージもしました。
 ノエルの状態は一進一退といった感じでしたが、冬でも以前のよう状態にはならずに元気に過ごしていました。
 
 ノエルは残念ながら、2001年の初夏に腸閉塞で4歳の若さで亡くなりました。危篤のときに本当に歩けなくなったとき、先生と二人がかりでノエルを運びました。
 ノエルを焼骨して、お骨を拾ったとき、実際に見た寛骨臼と大腿骨頭の浅さに、本当によくがんばったね・・とつぶやきました。
 当時思ったことは、股関節が悪化して本当に悪くなったときに、私はちゃんとケアできただろうか?という思いでした。
 大型犬のほとんどは、高齢と共に後ろ足から弱っていきます。
 これから、大型犬と暮らす方にとっても介護は切実な課題なのだと感じました。
 
 私はノエルの介護と言う夢を果たす事ができなかったけれど、ノエルは本当に多くのものを私に残してくれました。

 障害があってもそれを乗り越え、明るく生きるということ。
 障害や病気の知識を持つ事が勇気に変わること。
 愛犬と一緒にあるけるということは、決して当たり前ではない、とても素晴らしいことなんだということ。
 いつか、愛犬が年老いたり、歩けなくなった日にそれはとても心の支えになる思い出にに変わるということ。
 
 ノエルとの笑顔の思い出とともに、私にはもう一つのアルバムがあります。それは、困難を一緒に乗り越えた戦友だったというアルバム。
 ノエルの笑顔のその向こうにはそんな物語があったということを私は一生忘れないでいたいと思います。

 この先の困難に立ち向かうとき、きっとその笑顔が応援してくれる事を信じて。


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