学校飼育動物公開市民講座レポート
「今こそ学校飼育動物を考えよう」〜子供たちの未来の為にに参加して
                         るんば (2003・8・8)

 
 私は小5のときに学校のうさぎが亡くなるまでそばで看取ったことがあります。先生に何度も助けてほしいとお願いしましたが聞きいれてもらえませんでした。用務員のおじさんと二人だけでお墓を作りました。とても悲しい思い出です。
 大人になった今、先生や身近な大人が動物に関する正しい知識と責任を持って、子供のやさしい気持ちを汲みながら、一緒にお世話してくれたらどんなにいいかと切実に感じています。

 現在、学校飼育動物をめぐる問題は数多くあると聞きました。動物愛護教室のボランティアで小中学校を訪れて、動物との接し方について(主に犬についてですが)子供たちと話す機会があります。犬と学校動物という違いはあっても、身近な動物について子供たちとどう関わっていくかという同じ視点で勉強してみたいと思い、今回講座に参加してきました。

学校教育と動物飼育  
   文部科学省初等中等教育局 視学官 嶋野 道弘先生


 嶋野先生は長野県のJAに招かれたことがあるそうです。農家の方に余っている畑や農機具、時間を有効に使って学校の子供たちに何かを伝えたい、学校側とどうかかわっていったらいいか教えてほしいと頼まれたそうです。
 今、子供の成長にどう関わっていくかということを真剣に大人たちが考えていることの現われではないかとおっしゃっていました。

1学校教育の課題

*学力の育成〜土日休みとなり、学力低下が懸念されています。でも、知識・技能を沢山もっていればいいのではないそうです。学ぶ意欲、判断力、思考力が求められ、それを含めて学力というのではないかとおっしゃっていました。

*心の教育〜昨今、人間が壊れ始めているのではないか・・という事件が多発しています。何もかもが簡単に手に入る便利な世の中・・・こういった世の中だからこそ、あえて不便さの中に身を置いて本物と関わることが大事ではないかということでした。
 
*良き生活者としての学び〜良き市民としての教育や共生、共存。何もかも行政になんとかしてもらおうというのではなく、自分たちで何ができるかを考えていくことが大事ではないかとおっしゃっていました。

 「体験」というのはやってみなければわからない。動物を飼うということは、社会に参加することであり、経験することだそうです。犬の散歩やうんちを持って帰るマナーもそのひとつ。今の子供は知識はもっていますが、体験不足ではないか・・
 動物を育てることは、子供自身が育つことに通じるそうです。
 
2学校飼育と動物の関係

 市民にもっと学校について知ってもらうのが大切だそうです。また、学校側も市民に良く説明をして任せてもらえるようにしてくことが必要とのことでした。
 
★学校飼育動物について

*飼育可能な動物に既定はない。

*各学校に差異があるため、多様である。〜全国一律にはできない。各学校で考えていくことが問われる。

*子供との関わり〜動物を実際に飼ったり育てたりして、本物と接することが大切。全然触れずに終わることがないようにする。
 子供から動物にはたらきかけ、動物から返されることで初めて子供自身が次のはたらきかけを工夫するようになる。情報を集めたり、観察したり、親しみを持って知識とともに動物へのふるまいも身につけることができる。生活や心が豊かになる。

 今は子供の想像力が欠如気味で、そういった意味でしつけは大事ですが、言い続けるには限界があるそうです。子供自身に考えさせ、主体性を大事にして、子供自身から問いがでるように導くことが大事だそうです。
 動物を飼って育てることの意味は、動物に関する知識、生命を理解することのほかに、直接かかわることで一度亡くなったらもう二度と戻ってこないこと、命の大切さを実感するためだそうです。
 ただ眺めているだけではお互いの距離は縮まらず、動物と子供が直接やりとりすることで初めて親しみがわいて距離が縮まるそうです。ふれあいの大切さをおっしゃっていました。
 今の子供たちが残念ながらそういった機会が減っています。だからこそ、大人が意図的にそういった機会を増やしてあげる必要性があるそうです。

 動物というのは、関心をもって見ようと思ってみなければわからない極めて独自な存在だそうです。かわいがって世話をするうちに、どんどん子供たちの描く動物の絵が詳細になり、生き生きとしてくるそうです。思い通りになるおもちゃではないこと、動物を客観化してみることができるようになり、協調性や思いやりが芽生え、命を預かることの責任感を学べるのだそうです。動物は教材ではなく、子供たちにとっては共に育ちあう仲間という存在になるそうです。

★学校側の取り組み方
 
*動物飼育の基本を学校全体で取り組み、無理せず責任を持って長く続けること。
*人事異動があるので、年度初めに毎年動物飼育のことをとりあげて学び、年度終わりに反省と確認をしあうと良い。
*動物の飼育環境、健康に目を向け、手洗いを励行させる。〜動物から子供に何かが感染するということだけではなく、人間が動物に何かをうつしてしまうのを予防するためだよと、双方向の意味からお互いに病気から身を守ることを教える。
*休日、長期休暇の世話〜1日1度は声をかけられるようにし、場所、当番などをキチンを決める。
*地域全体のサポートシステムを作る。〜教育文化の向上、保護者や獣医師などの専門家との連携。

可愛がってこそ子供を育てる動物たち
   日本小動物獣医師会学校飼育動物対策委員会   
                     副委員長 中川 美穂子先生  


<コンパニオン・アニマルといる人は?>


*安心感を得る。
*淋しくない。
*頼りにされて役割感を得る。
*運動できる。
*視覚でも楽しい。
*社会とつながる。〜介助犬が潤滑油の役割をすることも。動物介在療法、ふれあいなど。
*寿命がのびる。〜ストレス減、生きがいとなる。

 赤ちゃんに犬がすりより、とても嬉しそうな笑顔のスライドが現れました。
 心の教育には体験が必要だそうです。人間にとって感情をつかさどる前頭葉はとても大切で、幼児期の二才までに急激に発達するそうです。この発達とは、興奮したり、感動することで成長し、自然体験、動物とのふれあいなどが必要だそうです。
 コミュニケーションの75%はボディランゲージ、15%は言葉によるものと言われているそうです。動物とのふれあいから子供は動物が自分の思い通りにならないことを知ることができます。動物と関わったことのある子は相手の発する「やめて」というメッセージを読み取ることができるそうです。

 諸外国では子供も犬も大人が社会化すべきという考え方があるそうです。子供のそばに動物をおいてあげるということを自然に考えているようです。
 
 S.59年のアンケートでは、日本小学校5.6年生の子は飼いたいとは言えないけれど、ペットと遊びたいという気持ちが多いことがわかるそうです。
 飼育は子供にとっていい影響があるか?(哺乳類、小鳥が対象)という質問に対し、ほとんどの親がいいと答えているそうです。しかし、実際に家で飼おうという意識は低いそうです。面倒を引き受けたくないという思いの表れのようです。

 次にトタン屋根で全面金網の飼育小屋のスライドが現れました。夏は猛暑で雨が振り込み、床は土とうんちでどろどろでとてもいい環境とは思えません。また、白骨化したウサギの骨や死体の写真もありました。先生になんとかしてほしいと訴えても何もしてくれない、先生はウサギがどんどん死ぬことをそのままにして、それを子供たちに埋めさせていたようです。それを自然淘汰、情操教育と勘違いなさっているとのことでした。
 どうすることもできない子供たちは自らを「飼育委員」ではなく「墓掘り委員」と言っていたそうです。それを知った父兄や校長先生が獣医さんたちなどの協力をへて、ウサギ小屋の改修をして、繁殖制限、里親さがしなどで管理できる頭数に減らしとても良くなったというお話でした。
 環境対策としては床を防水コンクリートにして、一部に土の運動場を作り、土の深さは10センチまで。(穴掘り、繁殖、脱走防止)、毎日掃除をして土も定期的に取りかえるといいそうです。その場合、もぐれないので必ず巣箱を用意してあげるそうです。(暑さ、寒さ対策)掃除の間にうさぎを放しておける外の運動場のある学校もありました。(囲いがある。)
 よく生まれたばかりの赤ちゃんウサギが土の上にバラバラ落ちて死んでいるのは、妊娠間近のメスをオスが交尾しようと無理やり追いかけまわし、生みながら逃げ回っているためで、オスの為に安心して子育てできないためだそうです。妊娠したうさぎがいたら安心できる場所にうつしてあげたり、オスを隔離したり、場合によっては去勢など色々対策を考えてあげないと、赤ちゃんウサギが育つはずがないと思いました。

 これと同じことが全国各地の学校で当たり前にように放置されて、子供たちが心を痛めているのだろうな・・と感じました。これら学校のように先生や大人たちの協力で改善できれば素晴らしいと思いました。ただ、すぐに変えることは難しく5年くらいかけてゆっくり改善していくそうです。
 
 学校飼育動物で一番トラブルの多い動物はウサギで、82.6%にものぼるそうです。また、その内容は怪我の化膿で80%。管理しやすい頭数に減らし、環境を整え、オスを1頭(入れるなら去勢)にあとはメスだけ、またはメスのみにするだけでも随分改善されるようでした。オス同士は激しいケンカになるそうです。
 孔雀などは狭い環境で飼われ、羽根もぼろぼろになり、もともとの気の荒さから学校には向かない動物だそうです。
 アヒルはもともと池に浮かぶことで暮らす鳥なのですが、池が汚かったり、狭くて浅いかったり、水場そのものがないために足を痛めて関節炎になることが多いそうです。ちゃんとした水場を確保して掃除もできなければとても不幸です。

 学校動物飼育と言うのは、人の土台を作るペット飼育であること、生命観と愛情と共感を養うためだそうです。学校動物を家族の一員のようなペットのように飼育できなければ、いきなり農家に行って牛や豚を見せても汚い、くさいだけで終わってしまうそうです。

 飼育する動物は世話が簡単な種類を少しだけ、子供の身近で丁寧に最後まで飼うことが大事だそうです。PTAなどが飼育応援団を作って家でペットを飼えない家族、特に飼育委員の学年ではない低学年生の親子が喜んで休日のお世話をしてくれる例もあるそうです。
 匹数が少ない場合は、金曜日になったら順番に持ちかえる学校もあるそうです。
 こうして大人と子供が一体で動物をかわいがることで、積極性、共感性が養われるそうです。

<学校でも動物教育の意義>

*命の大切さ〜生命尊重・責任
*愛する心の育成〜情愛・自尊心
*人を思いやる。〜共感・謙虚・協力
*動物への興味〜科学への入り口
*ハプニングへの対処〜工夫・生きる力・洞察力・決断
*緊張をゆるめる。〜癒し・人間関係改善・男女共生トレーニング

<学校獣医師の活動目的>

*情が通じる飼育指導。〜お世話は大変だけどかわいいからほっとないという子供たちの気持ちを尊重し、維持できるように。

*飼育指導〜講習会、定期学校訪問、衛生指導。
10〜15分のお話であとはふれあいながら。事実を話すだけではなくではなく体験として刺激を与えながら教える。

*日常の相談所として

 子供に動物の話をするとき、最初にふれあって動物に親しみ、好感をもたないと質問が出てこないし実感として身につかないようです。また、先生が怖がると生徒にも伝わってしまうので、先生の態度も非常に大事だそうです。
 
 ウサギは寄生虫さえ心配なければ人間にうつる伝染病が一切ないので安心だそうです。クラスペットを迎える上でのアレルギー対策ですが、動物はもちろん健康で内外寄生虫のない安心な動物を選び、子供は血液検査などでアレルゲンを特定してもらうと安心だそうです。講義などで触れ合う場合でも、たとえアレルギーでも長袖、マスクを着用して過剰な接触をさけるなどして気をつけ、隔離してしまうことはないそうです。
 アレルギーや人畜共通感染症で動物が怖い、汚いと隔離してしまうことより、動物と接する上で得られるあたたかさの方がずっと得るものが多いし大切だそうです。
 また、ひとくくりにアレルギーと言ってもアレルゲンさえわかれば接することのできる動物がわかること、動物だけがアレルゲンではないこと、感染症は動物より人からうつるもののほうがずっと多くて危険であり、動物由来の感染症で亡くなった例は極めて少ないと教えてくださいました。過剰な反応して子供から動物を遠ざけてしまうのではなく、正しい知識をもって冷静に対応してくださいとのことでした。

 飼育小屋の動物は学年全体で1年間飼育にかかわるようにし、クラスペットの場合はクラス替えのときに必ず生徒が引き受けることにしているそうです。

 動物を大事にするのは、それを大事にしている子供たちの心を大切にすること。先生が動物を好きになれば、子供も動物が好きになるそうです。飼育は動物がどう思うかを感じ取る愛情と共感を養うことになるそうです。

講座を終えて・・

 とても勉強になり、また感動しました。動物と子供の絆について漠然としていたのものがはっきりして、これからの活動の励みになりそうです。
 私自身が今までの半生でどんなに動物たちに支えられ、励まされ、幸せであったかをしみじみと振り返ることができました。
 これからも家のしっぽたちとのんびり幸せに暮らしつつ、地域の方や子供たちに動物っていいよ〜と伝えていくお手伝いができたらいいなと思います。


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