笑顔の力〜るんば  (2004.5.22)

 毎週木曜日9時からのドラマ「電池が切れるまで」を見ている。
 こども病院の中にある院内学級が舞台で、病気と闘う子供たちと先生や大人たちとの心の交流を描いている。
 このドラマには原作本がある。実際にこども病院に入院している子供達が書いた詩集だ。本にはテーマになっているひとつの詩がある。
「命」という詩を書いた宮越 由貴奈ちゃん。ドラマのホームページのTOPにその詩が載っている。
 
 ドラマの中では、由貴奈ちゃんのモデルとなった結花ちゃんという女の子がその詩を書いている。結花ちゃんの亡くなった後もその詩は院内学級のみんなに大切されている。
 ドラマの中の結花ちゃんは自分自身も長い闘病生活で辛い中、後から入院してくる小さい子の面倒をみてあげるやさしい女の子だ。髪の毛は抗がん剤治療のせいか抜け落ちて薄くなっていて、いつも赤いかわいいバンダナを巻いている。
 どんなに治療が辛くても、いつか自分が元気なれる日を信じて前向きに生きていた。実際の由貴奈ちゃんもきっとそんな素敵な女の子だったのだろう。
 やさしい結花ちゃんを見ていて、遠い昔の思い出が蘇ってきた。

 私は5歳のとき、2ヶ月ほど小児病棟に入院していたことがある。
 原因は今でもよくわからないが、両膝の関節の疾患で足が痛くて全く立てなくなってしまった。突然立てなくなって、友達と遊ぶときにはって歩いている私を見て、両親は異常に気がつき慌てて病院へ飛んでいった。当時はリウマチや関節炎など色々なことが疑われ、とにかく良くなるまで入院することになった。
 
 私のベットは他に入院している子供たちがいる小児病棟のひとつになった。
そこに寝かせられて、本能的に置いていかれるのがわかった。
 初めて両親から離れて、誰も知らない人ばかりの大きな病院にたった一人で残らなくてはならない。両親や看護婦さん、先生がなだめてくれたけれど私は泣いた。その時の心細さは今でもはっきりと覚えている。
 
 足が悪かったために自由に歩くことができず、他の子とも遊べない。いつもベッドにいた私にとても優しくしてくれたおねえちゃんがいた。年は私より少し大きいくらいで、小学校の低学年かいっていても中学年くらいだっただろう。
 そのおねえちゃんはいつも赤や黄色のバンダナを頭にしていて、「病気のせいで髪の毛がぬけちゃうの。」と笑顔で言っていた。バンダナをとると一休さんみたいにきれいな坊主頭で、頭の形がとてもきれいでかわいかったのを覚えている。
 赤いバンダナはとても似合っていたし、私には髪の毛のこともあまり気にならなかった。ただかわいいなあと思っていたのを覚えている。
 何より、彼女は笑顔がとても素敵だった。いつも明るく笑っていた。おねえちゃんといると私も気持ちが明るくなって、だんだん元気になっていった。
 歩けない私のために私のペッドへ来て、本を読んでくれたり、一緒に折り紙やぬり絵をした。調子が良くなると、一緒にプレイルームへ行って、座ったまま遊んだりできるようになった。おねえちゃんが他の子との橋渡しをしてくれて、すぐにみんなとも仲良くなったのを覚えている。
 次第に私は良くなり、立って歩けるようになってきた。そして先に退院することになった。
 おねえちゃんが私の来るずっと前から病院にいて、そして私が退院した後も病院にいるということが不思議で悲しかった。それでも、おねえちゃんはいつもの笑顔で退院の時も明るく「良かったね。」と言ってくれた。私はおねえちゃんと別れるのがとても悲しかった。「通院で来た時には必ず会いに来るからね。」と約束した。
 何度か通院でおねえちゃんに会ったが、ある日、小児病棟におねえちゃんがいなかった。両親も看護婦さんも詳しいことは教えてくれなかった。
 ただ、「おねえちゃんははっけつびょうというびょうきだったんだよ。」とだけ教えてくれた。
 
 おねえちゃんがどうなったか私にはわからない。けれど、白血病という病気が大人にとってもどんなに大変な病気か、抗がん剤治療がどんなに苦しいかを成長とともに知るようになった。おねえちゃんは小さな体でそんな大変な病気と懸命に闘っていたんだ・・・
 いつも笑顔だったおねえちゃん。いつも元気になると信じてがんばっていたおねえちゃん。自分が大変なのに、他の子への思いやりをいつも忘れず天使のようだった。小児病棟の人気者だった。
 ドラマの中の結花ちゃんにおねえちゃんの姿が重なった。
 
 笑顔はみんなを元気にする。みんなをしあわせにする。笑顔ってすごい。笑えるってすごい。
 きっと、結花ちゃんのような、おねえちゃんのような小さな天使が色んなところでひっそりといろんな人に勇気を与えているのだろう。勇気をもらった人はそのことをずっとわすれない。元気になって、大人になってもわすれない。彼女たちの笑顔の力を絶対にわすれない。

 自分が今、ここに生きていること。
 その事に毎日感謝している。
 生きていると辛いこと、悲しいことは沢山ある。
 でも、自分が生きていることに感謝する。

 生きている間に出会える人や動物たちの数には限りがある。
 人は長生きできると80歳。がんばれば100歳!
 私のまわりのしっぽたち。
 小鳥は長生きできると10〜15年
 犬や猫は15年〜20年
 亀は20〜30年
 金魚も長生きすると20年
 
 ていねいにつきあうとそう沢山の数とはつきあえない。
 
 それなら、小さな出会いも大切にしていきたい。
 自分の 人の しっぽの一生を。
 家族に 友達に しっぽに 周囲の人たちに。
 そしていつも笑顔で生きていきたい。


                     るんば

ひまわりエッセイに戻る



SEO [PR] 爆速!無料ブログ 無料ホームページ開設 無料ライブ放送