犬と猫が好きじゃなかったワタシ〜るんば
                             (2005.4.12)



 先日、図書館でふと懐かしい本が目に止まった。

盲導犬ダイナ

内和世訳 トム・サリヴァン ベティ・ホワイト共著/平凡社 」

 全盲の歌手トム・サリヴァンが9年間のダイナとの生活により得たのは、「行動の自由」と「自己の成長」。女優ベティ・ホワイトが引退したダイナとの4年の生活で得たのは「より良く老後を生きる」糧だった。
(アマゾンの紹介文から)


 この本は、私が犬が好きになるきっかけになった本だ。

 告白します!
 実は私はほんの10年位前は犬と猫が好きじゃなかった。
 久々にこの本を見かけその事実を思い出すと、今の自分が面白くてこの文を書きたくなった。今は愛犬愛猫にメロメロでHPまで作っている私なのだが・・

 時間はうんとさかのぼって小中学生の頃・・・
 当時の私は動物好きの変わった子供で両親が呆れるくらいだった。その頃家にいたのは手乗りのセキセイインコや鳩、モルモット、金魚、川魚、カメ、昆虫などの小動物。犬や猫に憧れてほしいほしい〜とせがんだものだが、両親はガンとして飼わせてくれなかった。小さい子供には世話しきれないし、両親もそうだったのだろう。小動物に関しては、私は朝早く起きてでも力仕事でもちゃんと世話していた方だと思う。当時の事は今のしっぽたちとの暮らしに役立っていると思う。

 近所には犬や猫を飼っている家がいくつかあった。性格のいい犬とは仲良くなって会うのが楽しみだったこともある。
 けれど、いい飼い方をしていない家が1件あり、散歩も行かず夜に放すので近隣の家がフン害に困ったり、避妊していなかったので子犬がどんどん産まれた。そのたびに奥さんが川に捨てたり、保健所へもって行ったという話を何度も聞いていた。犬は凶暴で人を噛んだこともあった。それは親子二代の犬が死ぬまで続いた。

 近所の飼い猫は、私の鳩を狙い気が気ではなく、抱っこして飼い主さん宅へ連れて行く事があった。とうとう最後には鳩が猫に獲られた跡だけが残って見つからなくなった。野良猫もいたのでどの猫だったのかはわからない。
 そういうのを経験しているうちに、私は小鳥や小動物はかわいいけれど、犬や猫は大変だし好きではなくなっていた。単純だなあ・・

 高校の頃、隣家に迷い犬がやってきた。保健所にやるというのでかわいそうになって飼ったのがジョンだ。ジョンは人噛んだり、狂ったように無駄吠えすることがある問題のはらんだ犬だとわかった。家族はしつけに疎く問題に対処できないまま、ただただこれ以上何もないように・・とひっそりとジョンを飼っていたというかわいそうな犬だった。この事は今でも反省しきり・・である。ジョンも私達もご近所さんも不幸だった。
 
 結婚した先には義父母がかわいがっている今のチャコがいた。(当時4歳)チャコは義父母とるんば夫にはベタベタでも、家族以外にはなかなか心を開かない犬。後から嫁に来た私は完全に低い位置で、吠えはしないものの帰ってきても寝たままでしっぽも振らない愛想のなさ。トホホ・・
 頼まれて散歩に行っても言うことは聞いてくれないし、力任せに引きずられ、遊ぶポイントの山で放してやると呼んでも来てくれないのでほとほと困った。今考えるとそれは当たり前で、信頼されていないのに放しちゃいけない筈だ。チャコにとっては格好の鬼ごっこだったことだろう。
 チャコのケアは全面的に義父母がしていたので、私は一緒の家に暮らしている居候というイメージだったのだろう。私も何となくチャコとは距離感があって特別親しくなろうとしなかった。犬猫にあまりいいイメージがなかったし、私には懐いてくれないと思ったからだ。
 
 そんな調子で半年・・
 図書館で「盲導犬ダイナ」を見かけた。最初は興味本位で借りて読んでみた。トムとダイナの絆の深さに驚かされた。目が見えなくてもダイナと一緒にマラソンやスキー、劇場、コンサート、いろんな事に挑戦するトム。まさしく、ダイナと共に成長し世界に羽ばたいたという感じだ。健常者の人でもなかなかできることではない。こんなに犬を愛し、一緒に行動しパートナーとして生きることができるんだと感心した。ダイナの犬の特性を生かした類まれなる行動やトムへの愛情。犬という動物を全くわかっていなかったと思った。
 そして、高齢でリタイアしたダイナをトムの親友のベティが迎えてくれた。トムには新しい盲導犬がやってきた。最初はトムのことばかりを思って辛そうだったダイナ。次第にベティに心を開き、そしてベティ自身も思いもよらぬほど老犬ダイナによって愛情に満ちた日々を送ることができた。お互いに年をとっても可能性に満ちていて、新しく出発できるということだった。

 もともと単純だった私は素直に大感動し、同時に自分の犬たちへの接し方や考え方を反省した。問題を起こしたり、自分に都合よくしっぽを振ってくれないからつまらないと思って諦めていた。ジョンはどうしようもなくバカだし、チャコは愛想の無いかわいくない犬だと思っていた。犬が悪いんじゃなくて、そういう私の方が全くわかってあげようとしていなかったんだ。チャコへの接し方を変えてみようと思った。
 それからの私は、積極的にチャコに声をかけるようにした。家族の中の地位の低さは相変わらずだが、私の事を妹分のように思ってくれているようになった。一緒に散歩について行ったら、足の遅い私が来るまでチャコは待っていてくれるのだ。時々ごはんを作ってあげてみた。お手もお代わりもしてくれるようになった。(最初は完全無視だった・・)
 1年ほどたつと私と二人だけの散歩でも言うことを聞いてくれるようになったし、嬉しそうだし、呼び戻しもできるようになった。本当に気は心だなあ・・犬にはわかるんだ。私とチャコの間にはちゃんと信頼関係ができていた。

 ダイナを読んでから、実家へのジョンの接し方をもっと良くしてもらうように電話をした。ジョンに困り果て諦めていた家族だが、それでも以前よりはずっとかわいがるようになってくれた。吠える、機嫌が悪いと噛もうとして触れない所があるというのは以前のままだし、手入れしきれないおしりのほうはいつも毛玉だらけ・・ではあった。それでもジョンなりに家族にだけは甘えていたと思う。

 チャコと暮らして2年がたち、様々な縁と事情があってノエルがやってきた。今度は全面的に私が面倒をみた私の犬だった。初めての大型犬には緊張したが、ノエルは私の接した犬の中ではぴか一の性格の良さ。ジョンやチャコの頑固な所に困ったことが多かったので驚いた。
 ジョンとチャコはほかの人や犬とあまり仲良くできなかったが、ノエルには小さな子や犬の友達が沢山できた。飼い犬同士遊ばせられるなんて夢のようだった。
 チャコも何故かノエルだけは大好きになり、あんなにクールだったのに、嬉しいときは飛び跳ねるほど陽気になったのだ!それからチャコは他の人も犬も受け入れるようになってきた。ノエルが来てからチャコの私への信頼は他の家族と変わらないほど強くなり、一目置いてもらえるようになった。全身を触ったり、苦手なシャンプーや爪切りをしてもじっと体を預けてくれる。

 ノエルは寝ている所に排泄してしまう癖があり、トイレのしつけは1年かかった。それでも時々、朝起きてみると寝床にお漏らしをしていたことがある。チャコは迷惑そうだった・・(ふれあい活動やしつけのレッスンなどの活動では粗相の失敗は一度もなかった。)それから淋しがって鳴く事もあった。そういう面ではとても困ったことがある。
 健康面では問題が多々あった。けれどそれを差し引いてもノエルは本当に素晴らしい犬だった。早くに天に召されたのだけが悔やまれる。だが、短い4年の間に犬の素晴らしさを200%教えてくれたのはノエルだ。私にとってのダイナそのものだった。
 ノエルが来てから猫たちと暮らすようになり、いつのまにか家の猫たちが大好きになっていた。本当に暮らしてみないと動物の良さはわからないものだと感心する。今は鳩を襲った猫のことも許している。

 ココアは他の犬にはなかった良さと欠点をあわせもつ愛すべき私のダイナだ。そして今の私にとって世界で一番素晴らしい犬!
 それぞれの時代、それぞれの犬たちはみんな個性も違って良い所も悪い所も沢山あり、そしてきっと私にとってのダイナだったのだと今は思う。犬は私の先生だ。昔も今も。
 
 

ひまわりエッセイに戻る

SEO [PR] 爆速!無料ブログ 無料ホームページ開設 無料ライブ放送