草原のいす〜ひまわりのしっぽ2 るんば
(2004.9.22)


誰かに話を聞いてもらうこと。
それは、心の中に相手のためのいすを
ひとつ用意してくれているようだ・・・と思いました。

だから一緒にいすに座って
私の話を聞いてくれた友達には
いつもありがとうの気持ちでいっぱいです。

この童話は、いつも私をささえてくれている
大切な友達みんなにささげます。





ある所に、とてもきれいな草原がありました。
みどりの草が見渡すかぎり、どこまでも広がっています。
そこには、ここちよいそよ風がいつもふいていました。

その草原のかたすみに、
2つのいすと1つテーブルがおいてありました。
その1つのいすには、
持ち主のカメがいつも座っています。
もう1つのいすは、
ここにやってくるお客さんのためのものです。

カメは毎日草原のいすに座って、お日さまのほうを見ながら
ひなたぼっこをするのが好きでした。
草原では、馬や牛がゆっくりと草をはんでいたり、
子犬たちがころげまわって遊んでいます。
カメはそれをながめるのが大好きでした。

あるとき、1羽のコマドリがいすにやってきました。
「カメさん、ステキな歌を覚えたんだ。」
コマドリはそう言って、
とてもきれいな声で歌を歌ってくれました。
「カメさんもいっしょに歌おうよ!」
コマドリはさそいます。
「ボクの声は低いからなあ〜。」
「だいじょうぶ。さあ、いっしょに。」

コマドリとカメはいっしょに歌いました。
カメはけっして歌がじょうずではなかったけれど、
ふたりの歌はたいそう楽しそうでした。

またあるときは、遠くに住む
はずかしがりやのネコからお花が届きました。
ネコはお花をじょうずに育てて、
時々こうして送ってくれるのです。
その季節季節のお花に
「げんきかい?」
という手紙をひとことそえて。
それだけでカメはとてもうれしくなってしまいます。
早速、きれいなお花をテーブルに飾りました。

またあるときは、読書家のクマと
おしゃべりのカエルがやってきました。
クマはお気に入りの本を1冊、
カエルはとっておきの話題を持ってきます。
クマとカエルは、いつもネコのくれたお花をうれしそうに
ながめて「きれいだね。」と言いました。

小さないすはカエルにゆずり、
クマはどっかりと草原に腰をおろします。
静かなクマにおしゃべりなカエル。
正反対のふたりですが、とっても仲良し。

クマが本の中の一節を読んでくれると、
カメとカエルはじっくりと聞き入ります。
カエルがおもしろい話をすると、
カメとクマはお腹をかかえて笑うのでした。

またあるときは、アヒルの奥さんがやってきました。
アヒルの奥さんは美人でしっかりもの。
みんなに頼られています。

アヒルの奥さんは、忙しそうにやってきて、
どっかりといすに座りました。
「バスの乗り換えの途中なんだけど、
ちょっと聞いてくれる?」
アヒルの奥さんは大きな声で言いました。

「私の主人が足を折ってしまって、
これからお見舞いなのよ。」
アヒルの奥さんがためいきをつきました。
「それは大変だね。」
カメもためいきをつきました。
ふたつのためいきぶくろが草原にころんと落ちました。

「お見舞いの後は、上の娘のヒナたちの面倒を
みにいかなくちゃならないの。そのヒナの1羽が
アヒルなのに全く泳げなくて、心配で心配で・・」
「それは心配だね。」
ふたつのためいきぶくろが草原にころんと落ちました。

「夕方は、年老いた私の母にごはんを作りにいくの。
一日中くたくたよ・・」
「それは大変だね。」
ふたつのためいきぶくろが草原にころんと落ちました。

「あ!もうバスの時間、行かなくちゃ!」
アヒルの奥さんは、慌てて立ち上がると
走って行ってしまいました。

後には、カメと6つのためいきぶくろと
アヒルの奥さんの忘れ物の包みが残されました。
「どうしよう、困ったなあ・・」
カメのおそい足では、アヒルの奥さんには追いつけません。
仕方がないので、奥さんがまた来るときまで
そのまま置いておくことにしました。

くる日もくる日も、アヒルの奥さんはやってきて、
ためいきぶくろを忘れ物を置いていきました。
いつしか、草原のいすのまわりには、
山のようなためいきぶくろと忘れ物でいっぱいになりました。
カメは途方にくれました。
「届けてあげようにも、ボクひとりでは出来ないなあ・・」
そうです。カメのおそい足では、アヒルの奥さんの家まで
3日3晩かかっても1つ届けるのがやっとです。

そこへ久しぶりにクマとカエルがやってきました。
「やあ、どうしたんだい?これは?」
ふたりはびっくりして聞きました。
カメは今までの話をしました。

「そういうことなら、私が全部
風呂敷に包んでとどけてあげよう。」
力持ちのクマが言いました。

「ボクは、ためいきぶくろに色を塗って、
うきぶくろを作るよ。そうして、泳げないヒナの子に
泳ぎを教えてあげよう。」
なんでも器用なカエルが言いました。

その計画をすっかり気に入った3人は
うれしくてにっこりしました。
じきに、アヒルのご主人も退院して、
娘さんのヒナたちも立派に泳げるようになるでしょう。
そうしたら、アヒルの奥さんも
きっと元気になれるにちがいありませんね。

「でも、それまではこのいすには座れないねえ・・」
カエルが言いました。

「ボクのとっておきの場所があるんだ。」
そう言って、カメはゆっくりと歩き出しました。
カメのあゆみはたいそうゆっくりでしたが、
大また歩きのクマも
ジャンブが得意のカエルも
後からゆっくりとついて行きました。

しばらく歩いて森をぬけると
鏡のような池があらわれました。
夜空のほしが池にうつって、それはそれはきれいでした。
クマとカエルは、その美しさに
「ほう」と声がでたほどです。





「ここでゆっくり泳いでから、
ほしを見ながらねむるんだ。」
カメが言いました。
「なんてステキなんだろうね。」
クマとカエルは言いました。

カメとクマとカエルは池のほとりに
ならんで座り、ほしをみあげました。
そうして、楽しそうにおしゃべりをしたということです。

<おしまい>


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