ファングと別れて、1ケ月が過ぎた。 ようやく精神的にはファングのいない生活に慣れてきた。 しかし、肉体的にはまだまだ生活のリズムが取り戻せないでいる。 昼間、どんなに汗を流して動いても、夜、まったく眠くならない。 今更ながら、ファングの介護中の生活がいかにハードだったのかを 思い知らされる。 介護を始めた頃は、精神的に追い詰められるほど疲労困憊していたのが、 最後は、介護を楽しむ余裕すらあったのだから、「慣れ」というものスゴイ。 人間、心の中で覚悟さえ出来てしまえば、肉体的にはどんな環境にも慣れる物らしい。 今は、毎日、時間と体力をもてあましている。
昨日はファングが亡くなって、ちょうど1ケ月。 1ケ月の間、1度くらい夢にファングが出てきても良さそうなものだが、 1度もファングの夢を見ていない。 しかし、夜、ジュンジュンが生前ファングがいつもいた場所をまんまるの目で 見つめている。 しっぽを太く膨らませ緊張しながら見ているのだ。 虫でも飛んでいるのかと、一緒に目を凝らすが何もない。 ファングがいるんだなぁ。ここに・・・ 「ファング」と声にだして名前を呼んでみる。 毎日数え切れないほど呼んでた名前。とても懐かしい響きだ。
ジュンジュンの目に映ったファングの魂は、一体どんなだったろう? いつもそうだったように、あの瞳で私を見つめていてくれただろうか。 そんな事を考えていたら、なんとなく手の平に、ファングを撫でている感触が 蘇って来た。 もちろん、実際に手の平で感じたわけではなく、単なる頭の中のイメージ なのだろうが、なんとも懐かしく幸せな気持ちになった。
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No.151 |
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